ソーラーカー"SALESIO"のバッテリについて
「ソーラーカーってくもりや雨の時は走れるの?」
といった質問をよくいただきます。
答えは、走れます。
実際に、雨天でもソーラーカーのレースは開催・続行されます。
太陽が出ていない時でも走行を可能にするのが、バッテリです!
快晴時
太陽電池(ソーラーパネル)で発電する電力が沢山あります。発電した電力は、走行のためにモータで消費します。
このときに、余った電力はバッテリに充電します。
停車中は、モータ消費電力が0[W]になるのでフルでバッテリに充電します。
曇天・雨天・影発生・夜間時
これらの状態では、太陽電池にあたる太陽光が少なくなってしまうので、太陽電池で発電する電力も少なくなります。
発電した電力だけでは、充分に走行できません。
こんなときに足りない電力は、バッテリを放電してモータに供給します。
これで、くもりでも雨でも天気に関係なくソーラーカーは走れるということがおわかりいただけたでしょうか?
もう一つ、ソーラーカーでバッテリを使うシーンがあります。
減速時
モータに電力をあたえると"回る"ということは、ご存じだとおもいます。では逆に、モータを"回す"と発電機になるということは、ご存じでしょうか?
ママチャリのライトや手回し発電機などが身近な例でしょうか。
ママチャリのライトはOFFの時は、軽くペダルを漕げると思うのですが、
ONにしたとたんに少し重くなりませんか?
これは、ライトを点灯するためのエネルギーの分ペダルが重くなります。
これと同じ原理でソーラーカーに、"回生ブレーキ"という機能をつけています。
減速したいときはモータを発電機にして運動エネルギーを電気エネルギーに変換します。
この電気エネルギーをバッテリに充電すると、また必要なときにモータに供給することが出来ます。
「余ったエネルギーをためて必要なときに使う」というといったように、バッテリは充電と放電を繰り返しており、ソーラーカーを走らせる上で重要な役目を担っていることが分かります。
"SALESIO"号のWGC2011バッテリユニット('07type) (2011年撮影)
中に、単三の電池みたいなものが沢山はいっているのが分かると思います。
これは、単三電池より一回り大きい"18650"(直径18,長さ65[mm]という規格)のLi-ionバッテリです。
現在使っているバッテリユニット('07type)は、複数のセル(18650)を並列に溶接した
「バッテリパック」を直列や並列接続して構成しています。
「バッテリパック」左上:'07type 右下:'11type (2011年撮影)
このバッテリパックは、昔の(2007年頃の)先輩達がつくりました。
先輩達は、一本一本のセルの直流内部抵抗を測定し、似た特性のもの同士を並列にスポット溶接しました。
実は、オーストラリアのソーラーカーレース"WSC2007"で使ったLi-ionバッテリです。
オーストラリア完走後、鈴鹿などのレースには使用されずに保管していました。
2011年に行ったの放電試験で新品に近い蓄電容量を維持しているということが分かったので、
秋田のソーラーカーレース"WGC2011"でも使用しました。
鈴鹿のレースで使用しなかった理由はいくつかあるのですが、
そのひとつにレギュレーションのバッテリ重量規制の違いがありました。
WSC2007ではオーストラリア大陸を3000[km]走るわけですから、バッテリの積載重量制限が大きいです。
一方、鈴鹿サーキットのレースでは8時間の耐久レースなのでWSC2007に比べるとバッテリ重量制限が小さいです。
バッテリ重量制限を最大限利用するために18650セルを複数直並列接続して重量調節するのですが、バッテリパックのよう溶接した状態では調節できませんでした。
なので鈴鹿のレースではバッテリパックの方法を用いませんでした。
オーストラリアのレースを小さくしたような秋田のレースでは、それぞれのバッテリパックから1セルをとることでレギュレーションを通過できるので、
写真の赤丸のようにバスバーの一部の電極を切断しセルを取り外しました。
普段の活動では、このバッテリユニットの充・放電特性試験を行い、故障や異常がないかを調べたり、構成しているバッテリパックの組み合わせを変えたりして、性能を上げています。
Li-ionバッテリについては次の記事でご紹介します。
-----
読みにくい点、疑問点などはお気軽にコメント欄へよろしくお願いします。
3EE 浅野
0 件のコメント:
コメントを投稿