2012年8月23日木曜日

D-subコネクタ作りの例


今回は、バッテリセル計測システムで使用する計測器をつくる課程の一部の紹介と、
D-subコネクタのハンダ付けの例としての記事を書きたいと思います。



まずは、D-sub(ディー サブ)コネクタとはなんなのかを簡単に説明します。

D-subコネクタ

私の近くにあったD-subコネクタを集めてみました。
身近なところでは、PCにあるかもしれません。
最近のPCにはなくなってきているようですが、PCのディスプレイ(アナログ)のコネクタであったり、COMポート(RS232C)のコネクタであったりしました。

このD-subコネクタは、汎用性が高く、値段も安価なため本校のソーラーカーでも多用しています。
スロットル信号や回生ブレーキ信号、スイッチ、ディスプレイなど・・・・
写真右下のD-sub 37pinはMITSUBAさんのモータコントローラの信号入出力などで使っています。
D-subコネクタは主に通信・信号線用のコネクタです。なので大きな電流を流す用途には向きません。


ピンの数は、9pinからはじまり、15,25,37,50pinがあり、
高密度型はメーカにまちまちのようですが、15,26,29,44,50,51,62,75,78,100pinなどがあります。

高密度型とは、ピンの配置が3列になって、9pinと同じ大きさのコネクタで15pinというようにコネクタの大きさがそのままで極数が多くなります。


今回は、高密度型の15pinをハンダ付けする工程をご紹介します。

16芯シールド線

今回の配線には、16芯のシールド線を用います。

シールド線はノイズ対策に優れたケーブルです。
導体(電気を通す)のシールド部分があって、その内側を信号線が通っています。
シールドを計測システムのグランド(アース)に落として(繋いで)おくと、ケーブルの外から飛んでくるノイズがシールドによって遮蔽されて、内側の計測信号線にはノイズが乗らない仕組みです。
これとは逆に高い周波数の信号をノイズとして外部に漏れさせないような用途にも使われます。



1.外側のシースを剥く。
カッターなどでシールドに傷を付けないように剥きます。

D-subコネクタカバーなどに入れるときの適当な長さにします。
長すぎると、カバーに収まらなかったりするので注意が必要です。
今回は、9pinのカバーを少し改造して使っているのでキツキツです。

ニッケルメッキのD-sub9pin用カバー


カバーですが、シールド線を使うためEMI対策用のニッケルメッキが施されている物を使いました。
キラキラしているのが特徴で、テスター等であたると導通します。

2.シールド線のシールドとカバーを接触させる。
カバーによっていろいろな接触方法があるのですが、
今回のタイプだとシールド部分をシースの方に折り返して(反転させて)、その部分に抜け止めの金具を挟みました。金具は自然にカバーと接触します。(念のためテスターで導通チェックもしました。)

あとは、余分なシールド部分はカットして綺麗にします。


3.配線を剥いて、ハンダあげ。
配線は3[mm]くらい剥いて撚って、ハンダあげ(予備ハンダ)します。
配線によっては、はんだごての熱で被覆が縮む物もあるので、短い時間で導線にハンダが浸透するようにすることが重要です。
導線が長すぎる状態でD-subにハンダ付けすると、隣のピンと接触してショートする事もあるので長すぎの時は切りましょう。


4.D-subコネクタに予備ハンダ。
D-subコネクタに予備ハンダをします。
(左)予備ハンダしたD-sub15pin (右)新品のD-sub37pin

比較の写真です。
右側のコネクタは新品の状態、左型のコネクタは予備ハンダをした写真です。
結構多めに盛っておいた方が、配線を付けるときにハンダ線を持たずにこのままハンダ付け出来ます。
ハンダの時間は最短でお願いします。
そうしないと、フラックス(やに)が蒸発してしまい、配線が思うようにつきません。
また、熱によってD-subコネクタは溶けてしまいます。


これらの作業、コネクタを固定しておくと楽です。
私は、クリップで挟んだり、小さな万力を使ったりします。


5.熱収縮チューブを用意
高密度型のD-subはそのままハンダ付けして使用していると、隣のピンと接触する可能性があります。

今回は、バッテリボックスのセルの電圧を測るためのD-subコネクタなので、セルをショートさせるようなことがあってはいけません。

そういうときには熱収縮チューブを使います。
熱収縮チューブは熱をかけると、直径が半分以下に縮むチューブです。
長さはほとんど変化しません。
ヒートガンやはんだごての熱で収縮させます。

熱収縮チューブ

私は、φ1.5の熱収縮チューブをこのようにカットして工具箱に忍ばしています。

そして、ハンダ付けする配線に通して、ハンダ付けをします。


6.配線をハンダ付け。
ハンダ付けする前に、熱収縮チューブが通っているか確認してください。
そして、熱収縮チューブは、ハンダ付け時に配線を伝わってくる熱で収縮するので、ハンダ箇所から遠くに離してください。

配線とD-subのそれぞれの予備ハンダを両方ともすべて溶かして、導線をD-subに押し込んでハンダ付けという感じでしょうか。
両方とも全て溶かすところが重要です。
中途半端に溶けたところ同士をハンダ付けすると、つかっているうちにハンダが割れて、配線がはずれてしまいます。

D-sub15pinにハンダ付け


D-sub高密度型は写真のようにセンターからハンダ付けします。


D-sub15pinにハンダ付け完了

シールド線は16芯で1本余ります。思わぬ所でショートしないようにこれにも熱収縮をかけて、絶縁処理します。

ちなみに、配線の色とピンですが、これはおおよそカラーコードに従った方が配線もしやすいです。
例として今回の色とピンアサインを載せておきます。

1pinは茶,2pinは赤,3pinは橙・・・・9pinは白。(10pinに黒を普通は入れますが、)
今回は、10pinにはライトグリーンをいれて、
11~13pinで白赤,白黄,白緑などの2色のもの、14pinでライトブルー、
そして、15pinは一番電位が低いので、黒としました。


7.配線を確認し、熱収縮。
全部ハンダ付けがおわったら、熱収縮チューブをハンダ付け箇所に被してみます。
ここで、配線のピンアサインを配線図やテスターを用いて確認して、完璧だったら収縮させます。

高密度型は、はじめに中央の列の収縮して、次に外側の列を収縮させます。


8.カバーに挿入、完成。

D-sub15pinとコネクタカバー

カバーに入れるとこんな感じです。(写真では配線未チェックのため、まだ収縮していません。)


16chMUXとD-sub15pin

16チャネルマルチプレクサユニット(Agilent 34902A)と、つくったD-sub15pinを接続して完成です。





ちなみに・・・
バッテリ関係の作業は、ひとつひとつ確実に行わなければ大きな事故につながります。
隣り合わせのピンでショートしていないかなどを調べてからでなければ危険なので使用できません。
新しくつくったものは、バッテリボックスとの接続前に全てのピンの導通を確認します。


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読みにくい点、疑問点などはお気軽にコメント欄へよろしくお願いします。

3EE 浅野


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