2012年7月16日月曜日

Li-ionバッテリの直流内部抵抗測定について

Li-ionバッテリの"直流内部抵抗測定"について


バッテリユニットを構成する際にセルの特性を調べて、似た特性同士を組み合わせると前の記事で言いました。
今回は、その特性を調べる方法の一つとして、直流内部抵抗測定についてご紹介します。


2012.07.07 4.2[V]時の直流内部抵抗測定の様子

直流内部抵抗とは、バッテリセル内に入っていると仮想している直列な抵抗成分のことで、
電流が流れると内部抵抗によってセル内部で電圧降下が発生するので、端子電圧と起電力に差を生じさせます。

直流内部抵抗を揃えた組み合わせでバッテリボックスをつくることで、
直列接続セルの端子電圧のばらつきを最小限におさえ、過充電、過放電を防止できます。


バッテリボックス運用時は、
内部抵抗による端子電圧のばらつきを考えて、多めのマージンで早急に充放電をストップさせます。




例えば、放電中のセルの電圧が3.0[V]になったら空っぽの状態だとします。
3.0[V]以下になってしまった場合(過放電)は、セルが故障してしまいます。
では、セルが3直列のユニットを考えます。

3.0[V]×3(直列)で、ユニットの電圧が9.0[V]になったら「空っぽ」なのかというと実際は違います。
セルの内部抵抗が揃っていれば、セルの電圧は3.0[V]ずつ均等になりますから、9.0[V]になったら「空っぽ」です。

しかし、内部抵抗が揃っていなければ、9.0[V]よりも上の電圧、
例えば9.3[V]付近で先に「空っぽ」になるセルが出てくるのです。

3.1+3.0+3.2=9.3[V]など。

9.0[V]まで放電してしまうと先に3.0[V]に達していたセルは、過放電して故障していまいますから、結果的には、9.3[V]で放電を停止しなければいけないのです。

3.0+2.9+3.1=9.0[V](←2.9[V]になっているので過放電している)



充電側も同じ事がいえます。
充電中のセル電圧が4.2[V]を超えると過充電になり、爆発の危険性があります。
これもセルが3直列のユニットを考えると、内部抵抗が揃っていない場合は

4.2[V]×3(直列)=12.6[V]よりも小さな電圧で充電する必要があります。

例えば、4.18[V]+4.2[V]+4.18[V]=12.56[V]など。


内部抵抗のばらつきが少ないのであれば、理想的な放電停止電圧や、充電電圧に近づけることができるので、蓄電容量を最大限に得られることになります。
また、並列接続セルに流れる電流が均一になるので、一部のセルの故障や劣化を防止できます。

並列のセルの場合、電流は流れやすい方にながれる(分流則)ため、
内部抵抗が大きい方には小さな電流が、
内部抵抗が小さい方には大きな電流がながれ、
大きな電流が流れてしまったセルの劣化が早まります。




さて、直流内部抵抗の測定方法は簡単で、放電前の端子電圧(起電力)V1[V]を測定し、I[A]で放電。放電中の端子電圧V2[V]を測定します。
ちなみに、本プロジェクトでは、1(C-rate)(=1時間率、1時間で蓄電容量を使い切る)電流で放電しています。

直流内部抵抗 r = (V1-V2) / (I) [Ω]によって導出できます。


測定器をプログラムで自動制御することで、放電時間などの測定条件を統一させます。

この測定には、主にメインプログラム(LabVIEW)と電子負荷装置(FK-1000L/高砂製作所),マルチファンクションDAQ(USB-6008/National Instruments)を使います。

電子負荷装置はGPIB通信によって放電のON/OFFが制御されていて、
DAQはバッテリパックの端子電圧や放電電流を測定しています。




また、直流内部抵抗は、バッテリの起電力などによっても変化します。
測定条件を統一するために、直流内部抵抗測定前は全パックを並列接続して"起電力ならし"を行います。

2012.07.06 バッテリパックの並列接続による"起電力ならし"の様子。



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3EE 浅野

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